暮らしのコト

満腹御礼 ご当地肉グルメの旅

福井の“ヨーロッパ”で味わう「ソースカツ丼」と「パリ丼」

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全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回は福井県福井市にやってきました。

福井市と言えば、戦国時代や江戸時代には城下町として大いに栄えた地域であり、まちなかのそこかしこでその歴史が感じられます。しかし、福井には実はもっと歴史のあるものもあるんです。

それが「恐竜」。隣接する勝山市が、恐竜の化石が多く出土する地域として知られ、出土した化石から、「フクイサウルス」や「フクイラプトル」といった名前をつけられた恐竜もいるほどです。福井駅前には、動き、鳴き声まであげる大きな恐竜の模型が設置されています。恐竜は、福井市のランドマークになっているんですね。

福井駅前の「恐竜広場」は大迫力です!

そんな福井では、人気の食べ物にも深い歴史があります。今回は、福井の飲食店の中でも、最も有名な店のひとつに挙げられる「ヨーロッパ軒」に伺いました。

こちらで食べられる、歴史のある肉グルメとは、「カツ丼」。いまや全国で当たり前に食べられているカツ丼ですが、今回お話を聞いた「ヨーロッパ軒総本店」は、“カツ丼発祥の店”と言われているんです。

福井では、知らない人はいない有名店。週末には地元客・観光客で行列ができます。

店内は1階2階合わせて60席あり、くつろげるお座敷席もあります。

今回、ヨーロッパ軒のカツ丼について語ってくれるのは、4代目の高畠輝成さんです。

高畠さん「大正2年(1913年)、当店の創業者である高畠増太郎が、東京の料理発表会で提供したものが日本初のカツ丼と言われています。このカツ丼は、トンカツを卵でとじたものではなく、カツにソースを絡めたいわゆる『ソースカツ丼』でした。この当時、店は福井ではなく東京の早稲田にあり、その後横須賀に移転。大正12年に起きた関東大震災をきっかけに、地元の福井へ店を移しました」

「福井で90年以上、すっかり福井の食として定着しました」と高畠さん。

カツ丼には、100年以上の歴史があったんですね! いったい、どのような経緯で、カツを丼に乗せる料理が生まれたのでしょうか?

高畠さん「明治39年(1906年)から6年間、増太郎はドイツのベルリンで料理修業をしていました。そこでドイツのウスターソースと出合い、このおいしさを日本に広めたいと考えました。帰国後、試行錯誤の結果に生まれたのがソースカツ丼でした。トンカツありきの料理ではなく、カツのベースになっているのは、肉を薄く伸ばしたドイツの揚げ物『シュニッツェル』なんです」

ドイツ料理から生まれたという驚きのカツ丼。早速調理していただきましょう。

高畠さん「カツには薄切りの豚ロース肉を使っています。それをラードにヘット(牛脂)を加えた油で、サッと揚げていきます」

空気に触れさせながら、高温でカラッと揚げていきます。

高畠さん「揚がったら、ウスターソースをベースにした特製ソースをカツ全体に絡めます。次に丼のご飯にもソースを回しかけ、そこにカツを盛れば完成です」

揚がったカツは熱いうちに特製ソースに絡めます。

ご飯にもたっぷりとソースをかけるのがおいしさの秘訣だそう。

「カツ丼」880円。

これが、福井全域で長く愛されてきたカツ丼なんですね! ご飯の上にキャベツを敷いたり、カツを切ったりすることもなく、かなりシンプルな見た目が、昔から変わらぬカツ丼の源流であることを感じさせます。

フタを開けると、ふわっと特製ソースの香りが立ち上がります。ツンとした力強さは、ウスターソース独特のものでしょうか。

ソースがたっぷり染みたカツ。

カツは一つひとつは薄いですが、ご飯を覆い尽くすように、たっぷり3枚入っています。カツには、まんべんなく特製ソースが絡まっていますが、衣がふやけているということはなく、サクッとした歯ごたえが残っているのは、とても細かいパン粉や揚げ油・揚げ方のおかげでしょうか。脂っぽさはなく、軽い食感で食べられます。

中の肉はとても柔らかく、スッと噛み切れるほど。スパイシーで甘いソースの味と、豚肉の上質な油が口の中で絡み合いますね!

高畠さん「もちろん、カツがメインなのですが、当店が創業時から伝えてきたのはソースのおいしさです。最後の仕上げは、店の中で私と先代ぐらいしか知らない企業秘密になっています」

実際、ソースとご飯だけで食べても、そのおいしさがわかります!

地元の米屋でソースに合うようブレンドしたご飯との相性も抜群!

歴史と味わいの深さを感じるヨーロッパ軒のカツ丼ですが、実はこの店にはカツ丼と並ぶほどの、人気メニューがあります。

その名も…「パリ丼」です!

高畠さん「パリ丼は、メンチカツをご飯の上にのせた料理になります。二代目店主と敦賀店の初代店主がヨーロッパ研修へ行き、現地で思いついたメニューとされています。研修の中で特に思い出が深かったフランスのパリにちなんだのが、名前の由来です」

「パリ丼」880円。

福井では、「パリ丼」がヨーロッパ軒、敦賀ヨーロッパ軒を始めとした洋食店で提供されており、カツ丼と並ぶ定番メニューとなっているそうです。

メンチカツは、まん丸のものが2枚。こちらも特製ソースにしっかりと浸かっています。ミンチに使われている肉は豚肉100%で、衣はカツと同じものを使用しているそうです。

カツに比べるとよりフワッとした食感のミンチから、アツアツの肉汁が溢れ出します。肉汁とソースの相性を楽しむなら、カツ丼よりもパリ丼かも!?

高畠さん「初来店の方は、まず名物のカツ丼を食べていただき、2回目以降の方はぜひパリ丼も味わっていただきたいですね。またカツとメンチカツに、エビフライが乗った『3種類スペシャルカツ丼』、カツ丼のカツの元になった『シュニッツェル』などのメニューもあるので、ぜひ何度でもお越しください」

誕生から今年で105年。ヨーロッパ軒を中心に県内に広がり、いまや福井を代表するご当地グルメになったカツ丼。高畠さんは、さらにこの文化を広めていきたいと考えています。

高畠さん「ヨーロッパ軒は暖簾分けした店が19店舗ありますが、すべて県内のため、福井でしか伝統のカツ丼を味わっていただくことはできません。なかなか福井まで来られない人に向けて、年2回、東京の百貨店の催事にも出店しています。1月25~30日には、新宿の京王百貨店に出店しますよ。カツ丼が福井に来ていただくきっかけになればうれしいですね」

1世紀以上に渡って受け継がれてきた、ヨーロッパ軒のカツ丼。食べた人を虜にする魔法のようなソースの味は、これからもこの地で愛され続けていくことでしょう!

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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